世界に背く 一瞬 愛の記念に

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2008年8月〜12月、録音制作された。(mp3, 3'58, 5.5MB)

愛し合うことの衝撃を、曲にしたいと随分長いこと思っています。
激しい打撃や、火花が散るような音、心と身体以外の夾雑な属性を切り裂くような音を、奏でてみたいと、長いこと思っています。


<歌詞>

愛の記念に かりそめのばら色で
世界に色をつけようよ

言葉を、メロディを、
口づけも、抱擁も、
手当り次第に染めようよ

そしてかりそめのばら色で
色あせぬばら色を
ほんのひととき描けたなら

一瞬でもそれは胸に咲き
風を越え、雪を越え、
俺とあなたを結ぶだろう

太陽の下で写真を撮ろうよ
人は変わっちまう
俺も変わるのだろうか
人はどこまでも残酷になれるんだな
憎み合うのは御免なんだな

あなたと一緒ならとても楽しいな
旅に出ようよ
ここにはもういられないな
友達よ家族よさようなら
涙ながら
故郷よ国よお別れだ
愛の記念だ


<使用道具>

グンガール | カルタール | ジル | チン | ケンガリ |
杖鼓 | ドーラク | ダルブカ |
リコーダー |
サズ | ウト | 擦弦ギター | クラシック・ギター | ケメンチェ | ソー・ウー |

曠野逍遥

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2008年11月、録音制作された。(mp3, 2'46, 3.9MB)

寒い国の老人の額に深く刻まれた皺に捧げる、という過去に制作した曲の、たどたどしいオートハープ独奏バージョンである。

世界は、あまりにも複雑多様である。それはひとところとして同じ場所ではない。そして一方で、世界は、御近所も地の果ても、それは何も変わりがない。何一つ変わるところがない。

そのような世界で、野に立つ我の姿をただ音によって活写せんとし、どこか、遠い野に立ち、風を堪える友へ送らんとす。


<使用道具>

オートハープ

雨の競技場 ある呪術

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2008年9月から10月、録音制作された。(mp3, 2'12, 3.2MB)

いにしえのローマの詩人は女を抱くならコロッセオで万歳している隙だとか何だとか言ったとか。誰が言ったかは存じません。

競技場においては、競技を眺める観衆の念のようなものが渦巻き、それは少なからず競技者にも作用していると考えられている。マジックである。呪術である。
そうした念波の影響か、何の加減か、競技場において爆発的な歓喜が訪れるとき、その時、ローマの詩人の言葉を本能的に思い出すなら、それを実行しても案外咎められないのかもしれない。
その時、まじないをかければいいさ。俺の思いが、俺が触れている君に乗り移るようにと。俺と君に歓喜が訪れますように、と。すなわち紛う事なく呪術である。


<歌詞>

雨の競技場で縮こまる
白い息の靄に包まれる
雨垂れが眼に波紋を描き
君の顔は震えて揺れた
雨の競技場で縮こまる
不意に歓喜の時が訪れる

万歳する君は まるで隙だらけで
後ろから抱きすくめる

俺のまじないが乗り移れば良いな
君に感染すると良いな
嗚呼


<使用道具>

グンガール | ムビラ |
ドーラク | 中太鼓 |
ガイダ | 鍵盤ハーモニカ |
エレクトリック・マンドリン | マンドリン | ウト |

夜は回る 立ち尽くす俺は、まるで踊っているかのようだ

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2008年5月から6月、録音制作された。(mp3, 5'46, 8MB)

鼻歌で曲が出来ることがときどきある。勿論、それは非常に簡単なメロディである。しかし、私は可能な限り大量の楽器を投入し、あらん限りの技術をぶち込んだ曲を制作してみたかったので、曲が単純なほど良かったのである。

弾ける楽器も、今初めて触りましたというような楽器もひっくるめて、あらん限りの技術で(?)ユニゾンのリフを奏でています。


<歌詞>

ドアは外の熱を堰き止める 闇を繋ぎ止める
季節の風が熱波を運ぶ 午後10時セ氏30度

ドアの内は空調の冷気 眩しい光のあぶく
目を閉じて君の名を唱えてみて 一歩踊り出せ
uno dos tres

ラム酒 マンボ テキーラ マリアッチ
夜よ回れ 果てしのない高速回転で
俺のダンスは下手っくそだから
夜よ回れ 360度パン

この胸が痛む 苦しみがある この胸は虚ろ 灰

グラスの底の澱みに溺れるおどけ者のようだぜ
眠れぬ亡者のクロールのような不様なダンスだぜ

それにしても撃たれたのか 刺されたのかえぐられたのか
この胸のこの疼きは何なのだ 知ってるよ
Eres tú, querida. no estás aquí. 
(それは君だよ、ベイビー 君はここにいない)

ラム酒 マンボ テキーラ マリアッチ
夜は恒星 レントゲンのように 赤裸に
俺を照らし 胸に開いた穴 闇
取り留めのない記憶に放り込んでくれ

Mi amor 忘れじのステップ
夜よ回れ ズズチャツ ズズチャツ ウォウォー
俺の身体を雑巾のように絞ったら
ナンセンスなカクテルが致死量取れるぜ ハ

ラム酒 マンボ テキーラ マリアッチ
夜よ回れ 更にもっと高速回転で
手に負えぬ記憶 人生は続く
残念なことに俺は君と踊れない
もう


<使用道具>

チャフチャス | マラカス | 瓶(ティオペペ空き瓶) | マウルトロンメル | チン | グンガール |
糸擦り太鼓 | テフ | ダルブカ | ドーラク | カズー |
ソプラノ・リコーダー、ソプラニーノ・リコーダー | マサイ・ホイッスル | シプシ | ミジュイズ | クロマチック・ハーモニカ | 鍵盤ハーモニカ |
クラシック・ギター、弓奏クラシック・ギター、エレキ・ギター | マダリン | ウト | ヴァイオリン

春の気配

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2008年3月、録音制作された。(mp3, 2'48, 3.8MB)

とある日曜日の午後、マイクの前に座り、即興的に演奏したものであり、極めて簡素、極めてテクニカル・エレメンツ低めな一曲である。
オープン・チューニングによるギターの習作でもあり、何となく、いや、明らかに季節的な気分を表してもいる。

チューニングは6弦から1弦に向かってDADGADと調弦されるモーダルD、或いは調弦をそのまま読んでダドガッドなどと呼ばれるものである。私はこの調弦の繊細な響きを愛する。

春の気配が届き、私は今年も生き延びたようだ。


<使用道具>

ベル | 土鈴 | マダリン | フォーク・ギター

悲しみ 砂と楽師

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2008年1月から2月、録音制作された。(mp3, 3'02, 4.1MB)

楽師が語ったり、歌ったり、演奏したりするべきこととは何だろうか。
そもそも「するべき」ことなどあるのだろうか。
それがパトロンやクライアントの意に添ったものであることは止むを得ないだろう。
しかし、楽師にも目があり耳があり束縛されぬ心がある。
例えば現場で起こっている出来事を音楽に刻み、それを口承に託すこと。歴史の叙述。
例えばロマンス、それは一個一個が特別でありながら普遍でもある。
そして刹那の心の揺れ。

サズを爪弾くとき、その音色を聴いていて、なぜかそんなことを考えた。


<歌詞>

砂は風に舞って通りに積もる
街の思い出を消していく
砂は風に乗って隙間を埋める
秘め事は葬り去られる

雪は優しい温かさを持っている
雨は口で表せぬ喜びを
砂は俺に何を語っているのだろうか
耳を澄ましてこだまを待つ

青い空の下、木陰に座り
通りを歩く君を待った
俺の指先は、目が合ったとき
流れるメロディを奏でた

砂は君を家に閉じ込めてしまい
砂は音を忘れさせてしまうだろう
砂は俺に何を語らせようというのか
耳を澄ましてこだまを待つ

街の人々は高い壁で
街の周りを囲い出す
街が再び色付き、呼吸を始め
青い空は戻るのだろうか

悲しみの涙が溢れ出したら
せめて何か 種は芽を吹くだろうか
砂は俺に何か語ってくれるだろうか
耳を澄ましてこだまを待つ

耳を澄ましてこだまを待つ


<使用道具>

サズ

参考までにこの曲でのサズ調弦を記す。

1コース(A)、通常3本の弦が張られ、1本だけオクターブ下に調弦されるが、その弦を張らない。
2コース(D)、通常2本の弦が同じ音で張られる。そのまま。
3コース(G)、通常2本の弦がオクターブ違いに調弦され張られる。そのまま。